ZendeskのAI関係機能で2024年にアップデートがあったものをまとめてみる
こんにちは、ゲームソリューション部の入井です。
本記事はゲーソル・ギョーソル Advent Calendar 2024の20日目の記事です。
2024年もいよいよあと少しで終わりという時期になりました。
ちょうど1年前、以下のような記事を書きましたが、今年に入ってからもZendeskのAI機能では様々なアップデートがありました。
この記事では、今年2024年の間にAI関係でどんなアップデートがあったのかを簡単に振り返っていきたいと思います。
AIエージェント
今年の大きなアップデートの1つとしては、チャットボット機能であるAIエージェントのリリースでした。
Suite全体で使用可能に
このリリースにより、通常のSuiteライセンスでも以下のチャットボット機能が利用できるようになりました。
- 推奨記事の提示
- 顧客からの問い合わせに対してヘルプセンターの記事を提案
- 会話フロー
- ボットビルダーを使用して、あらかじめ決めたフローで顧客対応
- フローの中でのAPI連携
- 会話の自動生成
- ヘルプセンターの記事の内容を元に生成された回答をボットが直接ユーザーへ提供
- ボットのペルソナ
- AIの返答の口調について指定する機能
- くだけた口調から礼儀正しい口調まで、企業ブランドに対応したものを指定可能
- ボット回答のトリガーに目的を利用
- ユーザーの問い合わせ目的に対応したボットフローを割り当て可能
- 従来のトレーニングよりも精度向上
このうち、太字で記載している機能については、従来はAdvanced AIというZendeskのAI機能を強化する追加アドオンを購入しないと利用できないという制限がありましたが、このアップデートによりアドオン無しでも利用可能になりました。
会話の自動生成とペルソナ
こちらの機能については、2023年時点ではEAP(早期アクセス)による提供でしたが、AIエージェントのリリースと同時に一般提供が開始しました。
どのように動作するかについては以下のブログでまとめています。
手軽にRAG(のようなもの)に対応したチャットボットを作れるZendeskのAIエージェントを試してみる | DevelopersIO
Ultimate
Zendeskは、生成AI関係のサービスを提供するUltimate社を買収し、その流れでAIエージェントにUltimateのAIを組み込む機能がリリースされました。
これにより、Zendeskのチャットボットがより高度な自動化機能を得ることができると言われています。また、Zendeskが提供しているAIモデルは現在追加のトレーニングができませんが、UltimateのAIであればトレーニングによって回答精度を向上させられると言われています。
2024年12月現在、こちらの機能は利用開始にあたりZendesk社への問い合わせが必要になっています。
インテリジェントトリアージのアップデート
インテリジェントトリアージは、顧客からの問い合わせ内容を分析し、その目的や言語、感情を読み取り結果をチケットにタグ付けする機能です。DevelopersIOでも、何度か機能を検証した記事を書いています。
ZendeskのAdvanced AIでチケットの内容から適切な担当者に自動割り当てする | DevelopersIO
Zendeskで会話内容から感情分析を試してみた | DevelopersIO
インテリジェントトリアージについては、2023年時点でAdvanced AIアドオンの導入により利用可能でしたが、今年に入ってからも以下のようないくつかのアップデートが入りました。
業種要件の追加
インテリジェントトリアージでは問い合わせ内容の目的を分析できますが、対応している業種が限られています。
今年に入ってから、以下の業種要件の内の太字部分が新たに追加されました。
小売業およびeコマース企業間取引(BtoC):メーカー、卸売、企業間取引(BtoB)、顧客間取引(CtoC)は含みません。
ソフトウェアプラットフォームまたはアプリケーション:BtoCのみ。ガジェットやハードウェア部品を商品化する企業は含みません。
金融サービス:従来の銀行およびオンライン銀行のみ。BtoCのみ。
保険:自動車保険、健康保険、火災保険、ペット保険など。
従業員エクスペリエンス:IT部門とHR部門のみ。
旅行、接客、観光:航空会社、バス会社、旅行代理店、レンタカー、予約管理など。
エンターテインメントとゲーム:オンラインカジノ、ベッティングプラットフォーム、イベントチケット販売。
教育:教育コース、試験情報、入試情報、奨学金情報、学生生活など。
業種要件については、今後も徐々に拡大していくと言われています。
Exploreデータセットやダッシュボードの追加
Zendeskのヘルプページより引用
インテリジェントトリアージに焦点を当てたデータセットやダッシュボードが追加されました。
これにより、Exploreで問い合わせの目的・言語・感情に焦点を当てた分析が可能となりました。
サポートチャネルの追加
新たに以下のチャネルでもインテリジェントトリアージの分析が動作するようになりました。
- メールチャネル
- Facebookの投稿
- X Corp
- メッセージングチャネル
- ネイティブのメッセージング
- Apple Business Chat
- Google Business Messages
- カカオトーク
- MessageBird SMS
- Sunshine Conversations API
特にメッセージ関係のチャネルが多く追加されています。これにより、チャットやSMS等からの問い合わせを分析しやすくなりました。
モデルの改善リクエスト
問い合わせ目的の分析について、必要なものをリクエストできるようになりました。
これにより、業種要件を満たせてはいるけれど必要な分析結果が不足している場合などに、Zendesk社側に追加要望を出すことができます。
その他機能
AIエージェント・インテリジェントトリアージ以外にも様々な機能のアップデートがありました。
なお。こちらで紹介している機能についても、利用にはAdvanced AIアドオンの導入が必要となります。
チケットコメントの要約と洗練化
チケット内でのユーザーとエージェントのやり取りをAIが要約する機能です。
昨年時点ではEPA状態でしたが、今年正式提供が開始しました。
EAP期間での検証は以下の記事で行っています。
[新機能]Zendeskの生成AIによる問い合わせ内容要約、回答ブラッシュアップ機能を試してみた | DevelopersIO
音声の自動文字起こし・要約
Talkによる通話内容をAIが文字起こしし、更に要約する機能です。
こちらも昨年はEPAでしたが、今年から正式提供が開始しました。
以下の記事で実際の動作を検証しています。
Zendeskで音声通話の文字起こしと要約をしてみた | DevelopersIO
ヘルプセンターの長文化、洗練化
GuideのFAQ記事の作成にあたり、AIが様々なサポートをしてくれる機能です。
以下の記事で検証しています。
Zendeskでヘルプセンターの長文化、洗練化の機能を使ってみた | DevelopersIO
オートアシスト
手順書を作成しておくことで、AIがそれを元にエージェントへユーザーに返信すべきコメントの内容を提案してくれる機能です。
こちらも、以前検証した記事があります。
【Zendesk】手順書を元にAIが回答内容を提案する新機能『オートアシスト』を試してみた | DevelopersIO
初回返信の生成(現在英語のみ)
マクロやFAQ記事、LLMの知識などを元に問い合わせチケットへの最初の返信内容をAIが提案する機能です。
こちらの機能は正式提供機能ですが、2024年12月現在対応言語が英語のみとなっています。
日本語に対応次第、こちらのブログでも検証する予定です。
統合の候補
Zendeskのヘルプページより引用
現在アクセスしているチケットと統合できそうなチケットがあれば、AIが提案をしてくれる機能です。
例えば、同じ顧客から類似の内容の問い合わせが同じタイミングで届いた場合などに、AIがそれを検知して統合を提案してくれます。
その他機能(EAP中)
現在EAPの段階のAI関連機能についてもご紹介します。
こちらは、専用のフォームからリクエストすることで使用可能となります。(各機能のドキュメントからリンクあり)
類似のチケット
Zendeskのヘルプページより引用
現在アクセスしているチケットと類似の内容のチケットがあれば、AIが表示してくれる機能です。
「統合の候補」と似た部分はありますが、こちらは過去にあった類似問い合わせチケットにエージェントがスムーズにアクセスできるようサポートするのが目的の機能です。
生成AIによるFAQ記事要約機能付きエディタ
FAQ記事作成・更新用のエディターが新しくなり、そこに生成AIが記事の要約を作成してくれる機能が付いてくる形になります。
エンティティ検出
ユーザーからの問い合わせ内容の中に、サポート側にとって重要な単語が含まれていた場合にそれを検知してくれる機能です。
例えば、特定の製品名を検知してチケット画面でハイライト表示したり、検知をきっかけにトリガーを動作させたりできます。
こちらについては以下の記事で検証を行いました。
【EAP】Zendeskのエンティティ検出機能を使って、チケット内の特定単語を検知できるようにしてみた | DevelopersIO
ヘルプセンターの検索生成
FAQサイト内でユーザーが記事検索をすると、検索キーワードに対応した回答をAIが生成してくれる機能です。
生成される回答については、FAQサイト内にある記事の内容に基づきます。
これにより、ユーザーは個別の記事を見て回らなくても、知りたい情報を素早く得ることができます。
2025年の展望
Zendesk社は、今後リリースする機能の1つとして「音声用エージェントコパイロット」があると2024年の10月に発表しました。
これは、以下のような音声通話用AI機能を提供すると言われています。
- Poly.ai を搭載した新しい 24 時間 365 日対応の音声用 AI エージェントを使用して、すべての通話の最大 50% を自動的に解決し、顧客からの通話を解決します。
- 強化された AI 支援サポートにより、トランスクリプトと要約を使用して、より正確な解決策を提供し、通話をより迅速に解決し、管理時間を短縮します。
- 人間と AI エージェントの会話から得られる改善された QA 分析情報を活用して解約リスクと外れ値に対応し、顧客体験のギャップを特定して修正します。
こちらの記事より引用したものを機械翻訳
以下のページでも同様の機能が近いうちに提供されると記載されています。
これらの機能が提供されることで、通話関係のサポート業務をかなり効率化できると思われます。
2025年上半期中のリリースを予定しているとのことなので、リリースされ次第このブログでも紹介したいと思います。
最後に
今年1年のZendeskのAI関連アップデート情報をまとめてみました。
昨年のAdvanced AIアドオンリリース時は、正直まだあまり機能が多くはない印象でしたが、今年1年かけて様々な機能を使用できるようになりました。
AI関係はZendesk社が今最も力を入れている分野の1つであり、今後もAdvanced AIアドオンには更に機能追加がされていくと予想されるため、注目していきたいと思います。